今週の「アゴラの人々」

「こまばアゴラ劇場」に出入りする人々を追った、日々の記録。

月に数回、更新します。


 

vol.29 「利賀へのアドベンチャー2017.7.17

 

 また、利賀の季節がやってきた。

 

 毎年7月下旬に、富山県南砺市の利賀芸術公園で行われる「利賀演劇人コンクール」。

 今年もその期間に無隣館の合宿が行われる。今も、無隣館三期生が色々と準備をしているところだ。

 青年団からも、コンクールの参加者だったり、スタッフだったりで、利賀に行く人々がいる。

 一年前にも「利賀の日々」という記事で利賀のことを書いたのだけど、今年もやっぱりこの季節になると利賀のことを思い出して、書きたくなってしまうのだ。

 

 私がはじめて利賀へ行ったのは2年前。

 全日参加の無隣館生は、車や夜行バスでみんなで現地まで行くのだけれど、

 2年前、途中から参加となった私はひとりで利賀まで向かったのだった。

 運転免許を持っていないので、電車やバスを乗り継いで行った。

 私にとってはちょっとしたアドベンチャーだったので、行程を記録してみようと思う。

 もし、同じように利賀へ車以外の手段で行く人がいたら、参考になるといいなと思いながら。

 

 まずは、富山駅へ。富山駅に着いたら、高山本線に乗り換えて「越中八尾駅」へ向かう。

 そこから、南砺市営バスで「利賀芸術公園」バス停に着いたらゴールだ。

 

 2年前の私は、富山駅まで、せっかくだからと当時開業したばかりの北陸新幹線を使った。この年から、北陸新幹線のおかげで、富山までとても行きやすくなったのだった。

 新幹線のきっぷを取るとき、乗換案内アプリで高山本線の電車の時刻を調べた。

 越中八尾駅から乗るバスの出発時刻の、20分前までに着く電車を調べる。

 出てきたのは、バス出発の40分前に越中八尾駅に到着する電車だった。

 それだと少し待つなあ、急いで乗り換えればなんとかなるかな?と思って「一本後」のボタンを押す。

 するとびっくり、その電車の「一本後」は、一時間後なのだった。

 時刻表を出してみると、基本は1時間に1本。多くても、2本。しかも、昼の11時台には1本もない…。

 

 ちなみに、青年団の綾門優季さんは利賀芸術公園がある南砺市の出身だ。

 綾門さんに、「びっくりしたんです、電車が、1時間に1本とか2本なんですよ!」と言うと、

 返ってきたのは、「あ、富山駅、わりと電車来るんだね。」という言葉。

 はい、完全に私の甘えでした…。すみませんでした。

 

 それから、綾門さんは、私が利賀へ行く前に「虫がとても苦手」とツイートしたら、脅すように「利賀は山奥だから虫が引くほど多いよ」と言うのだった。

 そういえばその時は、ちゑさん(青年団・林ちゑさん)も利賀の様子を教えてくれた。

 当時ちゑさんは、無隣館合宿の期間よりもひとあし先に、利賀演劇人コンクール参加作品の出演者として利賀を見ていたのだ。

 ちゑさんは、ひとつひとつ、言葉の選び方がきれいなひとだ。

 綾門さんとちゑさんは次々に、利賀にいる虫と、最初はびっくりしていた人たちも次第に慣れてたくましくなっていく様子を話す。

 私が怯えていたら、ちゑさんは最後に、

「虫より星の方が多いよ、かがみちゃん!」

 と言ってくれた。星空が本当にきれいなんだよ、と。

 虫の情報は怖かったけれど、その言葉だけでちょっと救われる。

 私はちゑさんの、こういう、さりげなく使う言葉が好きなのだ。

 (…着いてから実感したけれど、本当に虫は多かった)

 

 さてさて。まだ富山駅までしか来ていなかった。

 高山本線は、2両編成だ。鉄道に詳しければ「私が乗ったのはキハ〇〇形」など書けたのかもしれないけれど、当時の私は、「かわいい電車だなあ」という子どもみたいな感想しか抱いていなかった。

 この電車、バスの車内のように、乗り降りするところにステップがある。

 ドアが見たことのない形だったので、これはどうやって開くんだろうと思ってしげしげと見ていたら、

 私の隣に立っていたおばあちゃんに「ちゃんと開くから大丈夫よ」と言われてしまった。はずかしい。

 

 越中八尾駅に到着したら、そこから南砺市営バス。利賀芸術公園へ行けるのは、1日に2本しかない。

 その日の夕方の便に乗り込んだのは私と、おそらく地元の方がもうひとりだけ。

 目指すは「利賀芸術公園」というバス停。

 そこまで1時間の山道。これが本当に、うねうねとした山道。車酔いしやすい私には地獄のような道のりだ。落ちたら死ぬ!というような道でもガードレールが無いことがあって、ひやひやする。

 しかし、途中、木と崖に囲まれていた視界がぱっと開けて、右手に大きなダムが現れた。

 私は、運転手さんとわたしともう一人だけしかいないバスの中で、うわー!と叫びそうになった。

 盛夏の元気いっぱいの緑と、どーんと広がっている水面は静かで、雄大。

 この景色は山道を頑張ったご褒美だな、と思ったけれど、いやいや、頑張ったのは私じゃなくて運転手さんだ。

 

 やっと、利賀芸術公園のバス停に到着!

 バス停の目の前には、橋。流れているのは百瀬川。

 山の中にぽっかりできた広い広い芸術公園を前にして、ずいぶん遠くまで来たなあ、と実感する。

 

 橋を渡って、交流館という建物へ。

 交流館の入り口でうろうろと中の様子をうかがっていると、無隣館二期の人々がたくさん出てきた。

 「お、カガミ、来たのかー」という馴染みのある声に、ぶわっと、心がほどける。

 当時、無隣館二期が始まってたった3,4か月のころだったけれど、二期の人々の顔を見たら想像以上に安心したので、いつのまにかこの人たちがとても好きになっていたことに気づく。

 ちゑさんにも、その後すぐに会った。

 ちゑさんは覚えていないかもしれないけれど、「よく来たね。もう少し暗くなったら、星がすごいんだよ」と言ってくれたのが、私はとっても嬉しかったのだ。

 

 今回はいつものように”アゴラの”日常を書いた記事とは少し違うかもしれないけれど、

 これも私にとってはアゴラで出会った人々との大切な思い出。

 今年も、利賀の日々が始まる。

 

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